2016年度 全国アンケート結果の公開

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今年もご協力頂きましてありがとうございました。下記に御協力頂いた施設一覧を掲載しております。


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2016年1月1日-12月31日までの1年間に行われた冠動脈外科手術に関する全国アンケート調査結果の年次報告をする。

今回は全国の493施設に依頼し、306施設の施設から回答をお寄せ頂き、回答率は62.1%であった。これは前年の回答率67.2%を下回った。

詳細で複雑な内容にも関わらず、多くの施設,先生方にご協力を頂き,この場にて厚く御礼を申し上げる。

このアンケート調査は、日本冠動脈外科学会の学術委員会において、その内容や調査・集計方法を検討し、それに基づいて行っているものである。1996年の第1回日本冠動脈外科学会からこの調査を行っており、それ以来今回で22年連続22回目の調査である。

 

今回は術中グラフト流量測定の現状に関するアンケート調査を合わせて行い、その結果もアンケート調査結果に続いて掲載した。

これらのデータは日本冠動脈外科学会の公式ホームページにおいて過去のデータと共に公開しており、どなたでも閲覧、ダウンロード可能であり、我が国の冠動脈外科における基礎的データとして、多くの方々に広く引用されている。

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回答を頂いたアンケートのデータを集計した結果、分析の対象となった冠動脈バイパス術は12,729例、単独冠動脈バイパス術8,492例、合併手術は4,237例であった。単独手術と合併手術の割合では合併手術率が前年より増加した。

単独手術のうち初回待機的冠動脈バイパス術は7,142例で、このうちoff-pumpが4,424例、on-pumpが2,718例であった。Off-pumpの施行率は62%で、前年(63%)より低下したが、依然として高い施行を示した。

一方、緊急、再手術などの初回待機手術以外のバイパス術は1,350例で、この内半数以上の51%がoff-pumpで行われ、これは前年(51%)と同じであった。

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スライドは1996年以降のoff-pump CABGの施行率の年次変化を示したものである。

Off-pumpは調査以降、急激に増加しており、2003年に初めて50%を越え、さらには2004年に60%を超えた。その後は60%台で推移している。前年は単独冠動脈バイパス術では初回待機手術の63%がoff-pumpで行われた。今回の調査ではoff-pumpの施行率は62%とやや低下したが、依然高い施行率であった。わが国ではoff-pump CABGはスタンダードな冠動脈バイパス手術術式として完全に確立している。

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初回待機手術ので術式の内訳を示す。

初回待機手術のうち、on-pump(心停止)は23.9%に行われ、On-pump(心拍動)は14.2%に行われ、これらは前年とほぼ同様であった。Off-pump総数4,424例のうち、最後までoff-pumpで行えた(完遂)のは97.7%であり、途中でon-pumpへ移行したのは2.3%であった。これは前年の1.8%とより若干上昇した。

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手術手技別の成績(死亡率)を示す。

単独冠動脈バイパス全体(総数)の死亡率は1.66%で、前年(1.72%)より低下した。単独初回待機手術の死亡率は1.09%と前年(0.83%)よりも若干上昇したが、良好な成績を示した。

このうち、on-pump(心停止)の死亡率は1.29%で、on-pump(心拍動)は1.28%と前年とほぼ同様であった。Off-pumpを完遂できた症例の死亡率は0.86%と前年(0.54%)よりも上昇し、手術成績はやや悪化した。

Off-pumpから途中でon-pumpに移行した症例の死亡率も5.88%と前年(4.40%)よりも上昇し、成績はやや悪化した。

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単独手術総数と初回待機手術の死亡率の年次推移を示す。

両者の死亡率は年によって増減があるが、全体に低下傾向にある。今回の単独手術総数の死亡率は1.66%で、前年の1.72%よりも低下し、良好な成績を示した。

初回待機手術の死亡率は前年は0.83%であったが、今回は1.09%とやや上昇した。

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Off-pumpに関する詳細な調査を行った2004年以降における単独初回待機手術の手技別死亡率の年次年次推移を示す。

Offからon-pumpへの移行症例の死亡率は全体に高い傾向にある。前年は死亡率4.4%であったが、今回は死亡率5.88%と上昇し,成績は悪化した。

その他の手術手技の死亡率は比較的安定した成績であった。

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初回待機手術全体の病変数による成績を示す。

横軸は病変数別の割合を、縦軸はその死亡率を示す。

初回待機手術全体の死亡率は1.09%と前年(0.83%)よりもやや上昇した。

3枝病変が全体の50%と最多を占め、その死亡率は1.20%であった。LMT+3枝病変が最も死亡率が高く、1.56%であった。

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初回待機以外(再手術や緊急手術)の手術全体の病変数による成績を示す。

同様に横軸は病変数別の割合を、縦軸はその死亡率を示す。

初回待機以外の死亡率は4.67%と依然として高かったが、前年の死亡率6.36%より成績は向上した。

これも3枝病変が全体の33.8%と最多を占め、その死亡率は4.17%であった。最も死亡率が高かったのは1枝病変で、7.50%であった。

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スライド10

初回待機以外(再手術や緊急手術)の手術総数の手術手技による成績を示す。

同様に横軸は手術手技の割合を、縦軸はその死亡率を示す。

このうち、半数以上(51.5%)がoff-pumpで行われ、その死亡率は2.49%と前年の2.77%より低下し、成績は向上した。また、on-pump(心拍動)の死亡率は7.46%と前年の13.35%よりも著明に低下し、on-pump(心停止)の死亡率は6.14%と前年の6.58%よりも低下し、成績は向上した。

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手術手技別のバイパスグラフト本数の割合を示す。横軸は割合を示す。4枝以上を4枝として計算した全体の平均バイパス本数は3.05で、前年の2.99より増加し、より多くのバイパスを吻合する傾向にある。

手術手技別に、上からon-pump(心停止)が3.17本、on-pump(心拍動)が3.10本、off-pumpからon-pumpへの移行症例が3.25本であった。一番下がoff-pump(完遂)で2.99本で、前年(2.74本)よりこれも増加した。On-pump(心停止)のバイパスグラフト本数が多く、off-pump(完遂)のバイパスグラフト本数が最も少ないのは例年通りである。

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今度は逆にバイパスグラフト本数別の手術手技の割合を示す。横軸は割合を示す。

1枝バイパスの71.1%はoff-pumpで行われた。例年バイパス本数が増加するにつれ、off-pumpで行われる割合が減少し、on-pumpの施行率が増加する。

今回は4枝以上のバイパスの57.2%がoff-pumpで行われた。これは前年の58.5%よりも割合が低下し、依然として多枝バイパスでもよりoff-pumpで行われている傾向がある事を示している。

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スライド13

グラフト吻合箇所別からみたon-pumpとoff-pumpの比較を示す。横軸は割合を示す。

バイパスを吻合した冠動脈の場所,あるいは吻合の有無により6通りに分類した。上からRCA,LAD,LCXであり,それぞれ上がon-pump(心停止)、下がoff-pumpである。

Off pumpでもon-pumpでもLADへのバイパス吻合は高率であり、on-pump(心停止)で88%、off-pumpで91%の症例でLADへのバイパス吻合が行われ、ほぼ同率であった。RCA,LCXへのバイパス吻合もon-pump(心停止)とoff-pumpではほぼ同率に行われていた。

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吻合部位の有無からみたoff-pumpとon-pumpへの移行率の関係を示す。横軸は症例の割合である。

上の3段がそれぞれの冠動脈にバイパスを吻合した症例で、下の3段がそれぞれにバイパスを吻合しなかった症例で,どの程度の割合でoff-pumpから移行したかを表している。

LADにバイパスを吻合しなかった症例の10.7%がoff-pumpを完遂できず、on-pumpへ移行し、これは他に比べ著明に高い確率であった。すなわち、LADへの吻合が出来なかった(あるいはしなかった)症例がoffからon-pumpへ移行する確率がより高いことを示唆している。

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初回待機手術における年齢分布を男女別に示す。

全体の79.1%が男性で、女性は20.9%であった。男女比は前年と全く同じで、常にほぼ一定である。

男性のピークは前回と同様に70歳代で、女性のピークも70歳代であり,この数年は年齢分布に変化はない。

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初回待機手術における高齢者の割合の年次推移を示す。

70歳以上は2000年では39.3%であったが、年々増加し、今回は50.9%と前年(51.8%)とほほ同様の割合であった。また、80歳以上の割合は今回13.5%と前年(12.3%)より増加した。年々、高齢者の割合は増加傾向にある。

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各年齢層における死亡率の年次推移を示す。

以前は高齢者ほど死亡率が高かったが、年々高齢者の死亡率が低下する傾向にある。今回は70歳台の死亡率が1.32%、80歳以上の死亡率は1.92%と前回に比し上昇し、成績は悪化した。

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単独バイパス手術におけるグラフトの選択を示す。

バイパスの延べ本数は22,938本であり、動脈グラフトの内、左内胸動脈が最も頻用されて、35.3%と前年の35.5%と同様で、他の動脈グラフトより多く使用されていた。

動脈グラフトでは、次に右内胸動脈、橈骨動脈、胃大網動脈の順であった。動脈グラフト総数の割合は57.9%であり、これは前年(59.3%)より若干低下したが、依然として高い動脈グラフト使用率を示した。 一方、静脈グラフトは42.1%に使用され、前年の使用率40.6%より上昇した。

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単独バイパス手術におけるグラフト選択の年次推移を示す。

動脈グラフトは依然高い使用率であり、左右の内胸動脈の使用率はほぼ変化がない。しかし橈骨動脈と胃大網動脈の使用率は年々、低下している。一方、静脈グラフトは2005年は使用率29.8%であったが年々増加傾向を示し、今回は42.1%に使用された。近年、静脈グラフトが使用される割合が増加している。

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全単独冠動脈バイパス手術におけるstroke(脳血管に関する有害事象)の手術手技別の発生率示す。

Strokeは72時間以上継続する中枢神経系由来の神経学的欠損で、非可逆的脳障害あるいは永続的な身体的障害を伴うものと定義した。

全単独バイパス症例8,492例中、strokeを起こした症例は108例で、全体の発生率は1.27%であった。これは前年の発生率0.93%より上昇した。

手術手技別の発生率はoff-pump:1.10%(55例/4993例)、on-pump(心停止):1.05%(21/1999)、on-pump (心拍動):1.96%(27/1374)、offからon-pumpへの移行:3.96%(5/126)であった。

4群間での検定をKruskal-Wallis testを用いて、多重比較はTukey法を用いて検定を行った。その結果、off-pump(完遂)群とon-pump(心拍動)群の間 (p=0.0332)、off-pump(完遂)群とoffからon-pumpへ移行群の間 (p=0.0071)、on-pump (心停止)群とoffからon-pumpへの移行群の間(p=0.0072)にそれぞれ有意差が認められた。他は統計学的に有意差は認められなかった。これは前年と同じ結果であった。

以上の結果から、on-pump(心拍動)とoffからon-pumpへの移行は脳血管の有害事象を起こす危険因子であり、off-pump(完遂)はそれらに対して有意に脳血管の有害事象を回避することが示された。

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PCI後の冠動脈閉塞や狭窄、出血などの合併症に対する緊急冠動脈バイパス術の成績を示す。

PCI後の合併症に対して24時間以内に緊急手術を行った症例は78例であった。発生率は全単独CABG症例(8492例)に対して0.92%であった。

この内、死亡例は8例で、死亡率は10.2%と前年の死亡率17.4%より著明に低下し、成績は向上した。しかし、 PCI後の合併症に対する緊急手術は依然として予後不良であると言える。

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ここからは急性期心筋梗塞合併症に対する手術成績を述べる.

心室中隔穿孔の手術成績の年次推移を示す。横軸は年次、縦軸は死亡率である。

心室中隔穿孔の手術成績は、最近約15年間はほぼ横ばいの状態である。今回の手術死亡率は21.2%で、前年の28.9%より低下した。

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心室中隔穿孔の手術成績の内訳を示す。横軸は症例数を示す。

心室中隔穿孔の手術は昨年174例に行われ、死亡率は21.2%であり、前回の28.9%より低下し、成績は向上した。

このうちバイパス術を同時に行った症例は72例で、その死亡率18.0%で、行わなかった119例の死亡率は23.5%であった。

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梗塞部位と手術手技別にみた心室中隔穿孔の手術成績を示す。横軸は症例数を示す。

前壁梗塞を伴う症例は合計133例に行われ、全体の死亡率は19.5%であり、前年の26.4%より低下し、成績は向上した。このうちpatch closureは50例に行われ、その死亡率は22.0%であり、infarction exclusionは76例に行われ、その死亡率は18.4%であった。

後下壁梗塞を伴う症例は合計41例に行われ、全体の死亡率は26.8%であり、前年の34.4%より低下して。成績は改善した。そのうちpatch closureは18例に行われ、その死亡率は22.2%であり、infarction exclusionは19例に行われ、その死亡率は21.0%であった。

前年より成績は向上したが、今回も前壁梗塞に比べて、後下壁梗塞に伴う心室中隔穿孔の成績は不良であった。

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スライド25

心室中隔穿孔の梗塞部位別の死亡率の年次推移を示す。

 

前壁梗塞の死亡率は例年あまり変化がないが、後下壁梗塞の死亡率は近年低下傾向にある。前年より両者共に成績は向上したが、今回も前壁梗塞に比べて、後下壁梗塞の心室中隔穿孔の成績は不良であった。

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スライド26

左室乳頭筋断裂の手術成績の年次推移を示す。

左室乳頭筋断裂の手術成績は2010年には上昇したが、最近の成績は改善している。今回の死亡率は12.5%で、前年の28.5%より著明に低下した。

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左室乳頭筋断裂の手術成績の内訳を示す。横軸は症例数を示す。

左室乳頭筋断裂の手術は32例に行われ、死亡率は12.5%であり、前回の28.5%より著明に低下し、成績は向上した。

このうちバイパス術を同時に行った症例は12例で、その死亡率は8.33%で、行わなかった20例の死亡率は15.0%であった。

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心破裂の手術成績の年次推移を示す。

心破裂の手術成績は1980年代、90年代は年々向上してきたが、最近15年はあまり変わっておらず、相変わらず高い死亡率である。今回の手術死亡は26.4%と前年の29.5%より低下し、手術成績はやや改善した。

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心破裂の手術成績の内訳を示す。横軸は症例数を示す。

心破裂は発生機序に分けて分類し、その成績を調査した。

心破裂の手術は144例に行われ、その死亡率は26.4%と前回の29.5%より低下した。

このうちblowout typeの総数は60例で、死亡率は50.0%と依然高かった。バイパスを同時に行った症例の死亡率は33.3%、行わなかった症例の死亡率は54.2%であった。一方、oozing typeの総数は84例で、死亡率は9.5%で、blowout typeより著明に良好な成績を示した。バイパス術を同時に行った症例の死亡率は9.1%、行わなかった症例の死亡率は9.7%であった。

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心破裂の破裂機序別の手術成績の年次推移を示す。

blowout typeの心破裂の死亡率は最近低下傾向にあるが、相変わらず50&%と高い死亡率である。oozing typeの死亡率は変化は無い。

今年の両者の成績は、昨年より低下した。

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ここからは慢性期の心筋梗塞合併症に対する手術成績を述べる.

左室瘤全体の手術成績の年次推移を示す。横軸は年次、縦軸は死亡率を示す。

左室瘤総数(同時に虚血性僧帽弁閉鎖不全症の手術を行ったものを含む)の手術成績は最近は安定した成績である。今回の手術死亡率は4.87%で、前年の5.79%より低下した。

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左室瘤や虚血性心筋症に対する左室形成術もしくは左室瘤切除を行った症例の手術成績を示す。横軸は症例数を示す。

左室形成術および左室瘤切除の手術は昨年164例に行われ、死亡率は4.87%で、前年の4.23%とほぼ同様であった。

このうちバイパス術を同時に行った症例は114例で、その死亡率は4.38%で、行わなかった症例は51例で死亡率は5.88%であった。

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虚血性僧帽弁閉鎖不全に対する手術成績を示す。横軸は症例数を示す。

虚血性僧帽弁閉鎖不全に対する手術は今回312例に行われ、その死亡率は3.84%であり、前年(4.33%)より低下し、成績は改善した。

僧帽弁形成術を行った症例は226例で、その死亡率は1.76%であった。このうちバイパスを同時に行った症例は200例で、その死亡率は2.00%で、行わなかった症例26例の死亡率は0%であった。

僧帽弁置換術を行った症例は86例で、その死亡率は9.30%であった。このうちバイパスを同時に行った症例は59例で、その死亡率は11.86%で、行わなかった症例27例の死亡率は3.70%であった。

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左室瘤・虚血性心筋症と虚血性僧帽弁閉鎖不全を合併した症例に対する手術成績を示す。横軸は症例数を示す。

左室瘤・虚血性心筋症と虚血性僧帽弁閉鎖不全に対する手術は今回67例に行われ、その死亡率は5.97%であり、前年の死亡率7.86%より低下し、成績は向上した。

左室形成術と僧帽弁形成術を同時に行った症例は55例で、その死亡率は5.45%であった。このうちバイパスを同時に行った症例は38例で、その死亡率は7.89%で、行わなかった症例17例の死亡率は0%であった。

左室形成術と僧帽弁置換術を同時に行った症例は12例で、その死亡率は8.33%であった。このうちバイパスを同時に行った症例は8例で、その死亡率は0%で、行わなかった症例4例の死亡率は25.0%であった。

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結語(1)

単独冠動脈バイパス術の死亡率は1.66%で、初回待機手術の死亡率は1.09%であり、前年とほぼ同様の良好な成績であった。

2.初回待機手術のうち62%がoff-pumpで行われ、相変わらず高い施行率であった。その死亡率は0.86%と前年より若干低下したが、良好な成績を示した。

3.Off-pumpからon-pumpへの移行率は2.3%であり、その死亡率は5.88%と成績は悪化した。

4.バイパス本数が多くなるにつれてoff-pump率が低下するが、4枝(以上)バイパス症例の57.2%がoff-pumpで行われた。

5.冠動脈バイパス術症例は年々高齢化し、70歳以上は全体の50.9%、80歳以上は13.5%占め、高率であった。

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結語(2)

6.動脈グラフトは全グラフトの57.9%に使用され、静脈グラフトの使用率は42.1%であった。近年、静脈グラフトの使用率が上昇している。

7. 術後合併症としての中枢神経系の有害事象(stroke)は、全冠動脈バイパス術の1.27%に発生した。Off-pump術後のstroke発生率はon-pump(心拍動)とoffからon-pumpへの移行のそれより有意に低く、off-pump CABGはこの合併症を回避しうる事が示された。

8. 冠動脈のインターベンション後の合併状のために24時間以内に緊急手術を行った症例は単独バイパス術の0.92%を占めた。その死亡率は10.2%と依然として高かった。

9. 急性および陳旧性心筋梗塞後の合併症に対する手術成績は前年より向上した。しかし、後下壁の心室中隔穿孔やblowoutタイプの心破裂の死亡率は依然として高く、予後不良であった。

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本年度は特別調査として、昨年(2016年4月)から新たに診療報酬点数として加算された術中グラフト血流測定加算の現状を調査すべく、これに関するアンケート調査を行った。このアンケート調査に回答頂いたのは292施設であった。

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質問1;術中グラフト血流測定加算として2500点(注;冠動脈血行再建術にあたって、グラフト血流を測定した場合に算定する)が取れる事を知っている。

回答;知っているが90.2%であった。

質問2;上記の加算を算定している。

回答;算定しているが78.6%であった。

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質問3;グラフト血流測定にはどんな機器を使用していますか?

回答;トランジットタイム超音波血流計のみ(VeriQ ;日本ビー・エックス・アイ、AureFlo;トランソニックジャパン など)が最も多く、215施設、次いでトランジットタイム超音波血流計+超音波画像診断装置(VeriQC ;日本ビー・エックス・アイ)が26施設、超音波画像診断装置 のみが6施設、その他の機器を使っているのが6施設であった。

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質問4;血流測定の評価項目はどれですか?(複数回答可)

回答;平均血流量が最も多く、236で、次いで血流波形の性状が202、PI (Pulsatility Index)が196、DF (Diastolic Filling)が108、その他が3であった。

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質問5; 4で選択した項目で最も重要視している項目はどれですか?(複数回答可)

回答;平均血流量が最も多く、174で、次いでPI (Pulsatility Index)が140、血流波形の性状が81、DF (Diastolic Filling)が10、その他が3であった。

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質問6;血流測定以外に画像診断法を使用していますか?

回答;使用している施設が16.5%、していない施設が83.5%であった。

  
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質問7;使用してる画像診断法はどれですか?

回答;ICG画像診断装置(PDE)が最も多く、26施設、次いでICG画像診断装置(SPY)が11施設、超音波画像診断装置が10施設、その他の機器を使用しているのが6施設であった。

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質問8;昨年(2016年)に行われた冠動脈バイパスのうち、グラフト血流測定でグラフト不全が疑われ, 吻合をやり直したバイパスは何本ですか?

回答;347本

質問9;昨年(2016年)に貴施設で行った冠動脈バイパス術の全バイパス本数は何本ですか?

回答;29008本 吻合をやり直した率;1.2%

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質問10; 吻合をやり直した症例で、判明したグラフト不全の原因は次のうちどれですか?

回答;吻合部狭窄や閉塞(テクニカルエラー)が最も多く、108、次いでグラフトの解離が36、冠動脈の解離が14、吻合部の出血や血腫が13で、原因不明が23であった。その他の理由が15であった。

その他の理由としては、グラフトの屈曲;3例、グラフトのねじれ;2例、血流競合;2例、グラフト内血栓、グラフト狭窄、糸の緩み、グラフトスパスム、中枢吻合トラブルなどがそれぞれ1例であった。

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追う質問11(1);吻合をやり直す基準があれば以下に自由に記載して下さい。

回答;グラフト流量測定(flow, PI, DF)に関する記載が最も多く、83、次いで、流量波形形状が33、吻合の形状が23、画像診断が14、ドップラー血流に関する記載が7であった。

その他、基準無しが3、総合判断が2、グラフト拍動触知、血液流入抵抗、中枢閉塞試験、術後早期の造影、不安がある時などがそれぞれ1であった。

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質問11(2);吻合をやり直す基準の内、グラフト流量測定に関する記載の詳細を示す。

回答;平均流量に関しては10 ml/min以下が最も多く、9で、PIは5以上が最も多く、11であった。DFの関する記載は少なく、DF<60%が2であった。

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質問12;術中グラフト血流測定は、グラフト開存率の向上に有用であると思いますか?

回答;有用であると思うが96.4%で、そう思わないが3.6%であった。


今年もご協力いただきましてありがとうございました。締切を過ぎてから送付されてきた施設のものはこの一覧に載っていないかもしれません。ご連絡いただければすぐに載せます。

連絡先:駿河台日大病院心臓血管外科 折目由紀彦
03-3293-1711(代)
orime.yukihiko@nihon-u.ac.jp


御協力頂いた施設一覧

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