2011年度 全国アンケート結果の公開

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今年もご協力頂きましてありがとうございました。下記に御協力頂いた施設一覧を掲載しております。


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2011年1月1日-12月31日までの1年間に行われた冠動脈外科手術に関する全国アンケート調査結果の年次報告をする。

今回は全国の436施設に依頼し、288施設から回答をお寄せ頂き、回答率は66,1%であった。前年度より回答施設数は増加したが、回答率は昨年(67.1%)よりやや低下した。回答率の増加がデータの精度を向上させるため、今後ともできるだけ多くの施設にご回答をお願いしたい。

詳細で複雑な内容にも関わらずず多くの施設,先生方にご協力を頂き,この場にて厚く御礼を申し上げる。

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このアンケート調査は、日本冠動脈外科学会の全国アンケート調査委員会において、その内容や調査・集計方法を検討し、それに基づいて行っているものである。1996年の第一回日本冠動脈外科学会からこの調査を行っており、それ以来今回で17年連続17回目の調査である。

これらのデータは日本冠動脈外科の公式ホームページにおいて過去のデータと共に公開しており、どなたでも閲覧、ダウンロード可能であり、我が国の冠動脈外科における基礎的データとして、多くの方々に広く引用されている。

今回は新たにPCI後の合併症に対する緊急冠動脈手術の現状と成績についての調査項目を加えた。

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回答を頂いたアンケートのデータを集計した結果,分析の対象となった冠動脈バイパス術は12,425例,単独冠動脈バイパス術は8,990例、合併手術は3,435例であった。今回も前回に比して、単独手術の割合が減少し、逆に合併手術率が増加した。

単独手術のうち初回待機的冠動脈バイパス術は7,454例で,このうちoff-pumpが4,972例,on-pumpが2,482例であった。Off-pumpの施行率は前回の調査よりさらに増加し67%で、依然として高い施行率であった。

一方、緊急、再手術などの初回待機手術以外のバイパス術は1,536例で、この内半数以上の55%がoff-pumpで行われ、前回(53%)より施行率は上昇した。

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スライドは1996年以降のoff-pump CABGの施行率の年次変化を示したものである。

Off-pumpは最近の約10年間で急激に増加しており、2003年に初めて50%を越えたoff-pumpは2004年に62%とさらに増加した。その後2年間は61%がoff-pumpで行われた。前回は単独冠動脈バイパス術では初回待機的手術の65%がoff-pumpで行われた。今回の調査でもoff-pumpの施行率は67%とさらに高い施行率であった。最近は8年連続で60%を超えており、わが国ではスタンダードな冠動脈バイパス手術術式として完全に確立している。

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初回待機手術ので術式の内訳を示す。

初回待機手術のうち、on-pump(心停止)は21.8%に行われ、前回(29.4%)よりこの割合は著しく減少した。On-pump(心拍動)は11.5%に行われ、これは前回(10%)より増加した。Off-pump総数4,972例のうち、最後までoff-pumpで行えた(完遂)のは96.2%であり、途中でon-pumpへ移行したのは3.8%であった。これは前回の2.3%より増加した。

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手術手技別の成績(死亡率)を示す。

単独冠動脈バイパス全体(総数)の死亡率は2.72%で、前回(1.45%)より上昇した。

単独初回待機手術の死亡率も2.12%と前回(0.75%)よりも大きく上昇し、両者とも最近10年では最も悪い成績であった。

このうち、on-pump(心停止)の死亡率は1.05%で、on-pump(心拍動)は3.95%であった。Off-pumpを完遂できた症例の死亡率は2.11%と前回(0.53%)よりも著明に上昇し、手術成績は低下した。

しかし、同様にoff-pumpから途中でon-pumpに移行した症例の死亡率3.16%と前回(4.17%)よりも低下し、手術成績は改善した。

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単独手術総数と初回待機手術の死亡率の年次推移を示す。

両者の死亡率は年々低下していたが、前々回は単独手術総数の死亡率は2.12%と上昇したが、前回は1.45%と著明に低下し、調査開始以来、最良の成績を示した。しかし、今回は再び上昇し、2.72%であった。

また、初回待機手術の死亡率は前々回は1.20%と上昇したが、前回は0.75%と低下し、今回また2.12%と再上昇した。これらは最近の10年で最も悪い成績であった。

このような成績の低下の原因は不明であるが、患者の高齢化、重症化、術者の代替わりなどが考えられる。

前回と同様にアナウンス効果によると思われる成績の向上を次回(来年度)に期待したい。

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Off-pumpに関する詳細な調査を行った2004年以降における単独初回待機手術の手技別死亡率の年次年次推移を示す。

Offからon-pumpへの移行症例の死亡率は2006年までは上昇したが、その後は低下に転じ、前々回は6.42%と再び上昇した。しかし前回は4.17%と低下し、成績は向上した。今回も3.16%と成績は改善した。

その他の手術手技の死亡率は全て前回よりも上昇した。特にon-pump(心拍動)の死亡率は3.96%と著明に上昇した。また、Off-pump(完遂)症例の死亡率は今回は2.11%と前回(0.53%)に比べて大きく上昇し、手術成績の悪化が示された。

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初回待機手術全体の病変数による成績を示す。

横軸は病変数別の割合を、縦軸はその死亡率を示す。

初回待機手術全体の死亡率は2.12%と前回(0.75%)よりも低下し、最近10年では最悪の成績であった。

3枝病変が全体の45.8%と最多を占め、その死亡率は2.14%であった。LMT+3枝病変は全体の19%を占め、最も死亡率が高く、2.82%であった。

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初回待機手術off-pumpの完遂症例の病変数による成績を示す。

同様に横軸は病変数別の割合を、縦軸はその死亡率を示す。

初回待機手術off-pumpの完遂症例の死亡率は2.11%と前回の0.53%より著明に上昇し、 off-pumpに関する詳細な調査を行った2004年以降最も悪い成績であった。

3枝病変が全体の43.4%と最多を占め、その死亡率は2.17%であった。LMT+3枝病変が全体の18.9%を占め、最も死亡率が高く、2.80%であった。

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初回待機手術on-pump心停止症例の病変数による成績を示す。

同様に横軸は病変数別の割合を、縦軸はその死亡率を示す。

初回待機手術on-pump心停止症例の死亡率は1.05%と前回(0.75%)よりやや上昇した。

これも3枝病変が全体の52.2%と最多を占め、その死亡率は0.59%と良好な成績であった。LMT+2枝病変の死亡率が最も高く、2.24%であった。

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初回待機手術のoff からon-pumpへの移行症例の病変数による成績を示す。

同様に横軸は病変数別の割合を、縦軸はその死亡率を示す。

初回待機手術のoff からon-pumpへの移行症例の死亡率は3.16%となり、昨年(4.17%)よりも死亡率は低下した。総数が190例と少なく、死亡数が死亡率に鋭敏に反映されるため、死亡率が高くなると思われる。

しかしながら、他の手術方法の成績と比して、本法の手術成績は常に不良で、さらなる成績向上ために解決すべき課題であることを再認識させられた。

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初回待機手術on-pump心拍動症例の病変数による成績を示す。

同様に横軸は病変数別の割合を、縦軸はその死亡率を示す。

初回待機手術on-pump心拍動症例の死亡率は3.95%で、前回(1.64%)より上昇し、極めて悪い成績であった。今回は常に最も成績が不良だったoff からon-pumpへの移行症例よりもこの手術手技の方が成績が悪かった。原因は不明であるが、さらなる詳細な分析が必要と思われる。

これも3枝病変が全体の48.5%と最多を占め、その死亡率は5.04%であった。

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初回待機以外(再手術、緊急手術)の手術全体の病変数による成績を示す。

同様に横軸は病変数別の割合を、縦軸はその死亡率を示す。

初回待機以外の死亡率は5.66%と依然として高かったが、昨年の死亡率5.30%とほぼ同様であった。

これも3枝病変が全体の30.7%と最多を占めた。死亡率が最も高かったのはLMT+1枝病変を有するもので、その死亡率は9.09%であった。

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初回待機以外(再手術、緊急手術)の手術総数の手術手技による成績を示す。

同様に横軸は手術手技の割合を、縦軸はその死亡率を示す。

このうち、半数以上(55.1%)がoff-pumpで行われ、その死亡率は3.42%と前回の3.39%と同等の成績であった。また、on-pump(心拍動)の死亡率は11.57%と前回の7.93%よりも上昇し、on-pump(心停止)の死亡率は5.40%と前回の6.85%よりも上昇し、成績は悪化していた。

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手術手技別のバイパスグラフト本数の割合を示す。横軸は割合を示す。

4枝以上を4枝として計算した全体の平均バイパス本数は2.96で,前回の2.99とほぼ同様であった。

手術手技別に,上からon-pump(心停止)が3.17本、on-pump(心拍動)が3.08本、off-pumpからon-pumpへの移行症例が3.25本であった。一番下がoff-pump(完遂)で2.86本で、全ての術式でバイパス本数は前回とほぼ同等か、前回を上回った。

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今度は逆にバイパスグラフト本数別の手術手技の割合を示す。横軸は割合を示す。

1枝バイパスの86.2%はoff-pumpで行われた。バイパス本数が増加するにつれ、off-pumpで行われる割合が減少し、on-pumpの施行率が増加する。

しかし、4枝以上のバイパスの半数以上(56.9%)はoff-pumpで行われた。これは昨年の59.6%と同等で、例年通り、多枝バイパスでもよりoff-pumpで行う傾向が強くなっている事を示している。

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障害枝別の手術手技の割合を示す。横軸は割合を示す。

1枝病変の86.4%がoff-pumpで行われた。障害本数が増加するにつれ、off-pumpで行われる割合が減少し、on-pumpの施行率が増加する傾向がある。

LMT病変を含む症例も同様の傾向であるが、LMT+3枝病変の半数以上(60.3%)がoff-pumpで行われた。これは昨年の60.0%よりも若干割合が増加し、多枝病変でもよりoff-pumpで行われている傾向を示した。

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障害枝別のoff-pump(完遂)とon-pump(心停止)症例の手術成績の比較を示す。縦軸は死亡率を示す。

総数ではon-pump (心停止)の死亡率は1.05%とoff-pump(完遂)の死亡率2.11%より低く、より良好な成績を示した。

障害枝別病変別でのon-pump(心停止)とoff-pump(完遂)の死亡率の比較では、どの病変でもon-pump(心停止)の方が成績が良好であった。

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障害枝別からみたoff-pumpからon-pumpへの移行率を示す。

全体では前回の2.3%から今回の3.8%と移行率は上昇した。

1枝病変の移行率は1.2%と極めて低く、これは昨年と同様であった。障害枝が多くなり、重症化するにつれてon-pumpへの移行率が増加する傾向がある。LMT+3枝病変の移行率は6.1%であったがこれは昨年の2.6%より著明に高かった。

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グラフト吻合箇所別からみたon-pumpとoff-pumpの比較を示す。横軸は割合を示す。

バイパスを吻合した冠動脈の場所,あるいは吻合の有無により6通りに分類した。上からRCA,LAD,LCXであり,それぞれ上がon-pump(心停止)、下がoff-pumpである。

Off pumpでもon-pumpでもLADへのバイパス吻合は高率であり、on-pump(心停止)で85%、off-pumpでも88%の症例でLADへのバイパス吻合が行われ、両者はほぼ同率であった。

また,RCA,LCXへのバイパス吻合はon-pump(心停止)の手術の方がoff-pumpより高率に行われていた。

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吻合部位の有無からみたoff-pumpとon-pumpへの移行率の関係を示す。横軸は症例の割合である。

上の3段がそれぞれの冠動脈にバイパスを吻合した症例で、下の3段がそれぞれにバイパスを吻合しなかった症例で,どの程度の割合でoff-pumpから移行したかを表している。

LADにバイパスを吻合しなかった症例の4.8%がoff-pumpを完遂できず、on-pumpへ移行し、これは他に比べ若干高い確率であった。すなわちLADにバイパス吻合をしなかった(あるいはできなかった)症例でon-pumpへの移行率が高いことがわかる。

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次に初回待機手術における年齢分布を男女別に示す。

全体の78.3%が男性で、女性は21.7%であった。男女比はこのところ常にほぼ一定である。

男性のピークは前回と同様に60歳代から70歳代に移行し、今回も同様であった。

女性のピークは以前から70歳代であり,年齢分布に変化はない.

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初回待機手術における高齢者の割合の年次推移を示す。

70歳以上は2000年では39.3%であったが、年々増加し、今回は51.5%と前回(49.2%)よりもさらに増加した。80歳以上の症例は2000年は4.3%であったが、これも増加の一途をたどり、今回は10.7%を占めるまで増加した(前回9.9%)。

年々、高齢者の割合は増加している。

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各年齢層における死亡率の年次推移を示す。

以前は高齢者ほど死亡率が高かったが、年々高齢者の死亡率が低下する傾向にあった。今回は70歳台の死亡率が0.84%と成績は改善していたが、80歳以上の死亡率は1.90%と前回の1.52%に比して上昇した。

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単独バイパス手術におけるグラフトの選択を示す。

バイパスの延べ本数は24,110本であり、動脈グラフトの内、左内胸動脈が最も頻用されて、35.3%と前回の35.6%と同様で、他の動脈グラフトより多く使用されていた。

動脈グラフトでは、次に右内胸動脈、橈骨動脈、胃大網動脈の順であった。動脈グラフト総数の割合は57.6%であり、これは昨年の58.3%より低下したが、相変わらず高い動脈グラフト使用率を示した。

一方、静脈グラフトは42.4%に使用され、前回の使用率41.6%よりも増加した。近年、静脈グラフトが使用される割合が増加する傾向にある。

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単独バイパス手術におけるグラフト選択の年次推移を示す。

動脈グラフトは依然高い使用率であるが、その使用率は年々、若干低下傾向にある。

一方、静脈グラフトは2005年は使用率29.8%であったが年々増加し、今回は42.4%に使用され、静脈グラフトが使用される割合が増加している。

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全単独冠動脈バイパス手術におけるstroke(脳血管に関する有害事象)の手術手技別の発生率示す。

Strokeは72時間以上継続する中枢神経系由来の神経学的欠損で、非可逆的脳障害あるいは永続的な身体的障害を伴うものと定義した。

全単独バイパス症例8990例中、strokeを起こした症例は83例で、全体の発生率は0.92%であった。これは前回の発生率1.77%より著明に低下した。

手技手技別の発生率はoff-pump:0.78%(44例/5582例)、on-pump (心拍動):1.34%(16/1197)、on-pump(心停止):0.96%(19/1974)、offからon-pumpへの移行:1.69%(4/237)であった。

4群間での検定をχ2-testとKruskal-Wallis testを用いて、多重比較はTukey法を用いて検定を行った。その結果、Kruskal-Wallis testでは4群間に発生率の有意差は認められなかった(p=0.182)。

以上の結果から、今回の調査では手術手技が脳血管の有害事象を起こす危険因子ではない事が示された。

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PCI後の冠動脈閉塞や狭窄、出血などの合併症に対する緊急冠動脈バイパス術の成績を示す。

PCI後の合併症に対して24時間以内に緊急手術を行った症例は94例であった。発生率は全単独CABG症例(8990例)に対して1.0%であった。

この内、死亡例は16例で、死亡率は17.02%と極めて高かった。手術手技別の成績では4枝バイパス術を除いてどの手技でも死亡率は高かった。

PCI後の合併症に対する緊急手術は予後不良である。

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ここからは急性期心筋梗塞合併症に対する手術成績を述べる.

心室中隔穿孔の手術成績の年次推移を示す。横軸は年次、縦軸は死亡率である。

心室中隔穿孔の手術成績は、最近10年間はほぼ横ばいの状態である。今回の手術死亡率は30.4%であったが、これは前回の25.0%より上昇し、成績はやや悪化した。

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心室中隔穿孔の手術成績の内訳を示す。横軸は症例数を示す。

心室中隔穿孔の手術は昨年184例に行われ、死亡率は30.4%であり、前回の25.0%より上昇し、成績は悪化した。

このうちバイパス術を同時に行った症例は69例(37%)で、その死亡率は33.3%で、行わなかった115例(63%)の死亡率は28.7%であった。

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梗塞部位と手術手技別にみた心室中隔穿孔の手術成績を示す。横軸は症例数を示す。

前壁梗塞に伴う症例は合計131例に行われ、全体の死亡率は25.2%であり、前回の20.0%より上昇した。このうちDagett法は33例(25%)に行われ、その死亡率は24.2%であり、Komeda法は97例(74%)に行われ、その死亡率は25.8%であった。

後下壁梗塞に伴う症例は合計53例に行われ、全体の死亡率は43.4%であった。前回の死亡率44.1%と変化なかった。そのうちDagett法は24例(45%)に行われ、その死亡率は33.3%であり、Komeda法は27例(51%)に行われ、その死亡率は51.9%であった。

今回も前壁梗塞に比べて、後下壁梗塞に伴う心室中隔穿孔の成績は不良であった。

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左室乳頭筋断裂の手術成績の年次推移を示す。

左室乳頭筋断裂の手術成績は最近では上昇していたが、今回は成績は改善した。しかし、相変わらず高い死亡率を示している。前回の死亡率は44.0%と高かったが、今回の手術死亡は28.6%と低下した。

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左室乳頭筋断裂の手術成績の内訳を示す。横軸は症例数を示す。

左室乳頭筋断裂の手術は21例に行われ、死亡率は28.6%であり、前回の44.0%より低下し、成績は改善した。

このうちバイパス術を同時に行った症例は3例(14%)で、その死亡率は0%で、行わなかった18例(86%)の死亡率33.3%であった。

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スライド35

心破裂の手術成績の年次推移を示す。

心破裂の手術成績は1980年代、90年代は年々向上してきたが、最近10年はあまり変わっておらず、相変わらず高い死亡率である。今回の手術死亡は30.7%と前回の31.4%より若干低下し、成績は改善した。

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心破裂の手術成績の内訳を示す。横軸は症例数を示す。

前回から心破裂は発生機序に分けて分類し、その成績を調査した。

心破裂の手術は150例に行われ、その死亡率は30.7%と前回の31.4%より若干低下した。

このうちblowout typeの総数は63例(42%)で、死亡率は52.4%と高かった。バイパスを同時に行った症例の死亡率は25%、行わなかった症例の死亡率は55.4%であった。一方、oozing typeの総数は87例(58%)で、死亡率は14.9%で、blowout typeより良好な成績を示した。バイパス術を同時に行った症例の死亡率は27.3%、行わなかった症例の死亡率は13.2%であった。

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ここからは慢性期の心筋梗塞合併症に対する手術成績を述べる.

左室瘤全体の手術成績の年次推移を示す。横軸は年次、縦軸は死亡率を示す。

左室瘤総数(同時に虚血性僧帽弁閉鎖不全症の手術を行ったものを含む)の手術成績は最近は安定した成績である。しかし、今回の手術死亡率は8.0%で、前回の4.3%より上昇し、成績は悪化した。

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左室瘤・虚血性心筋症に対する左室形成術(左室瘤切除を含)のみを行った症例の手術成績を示す。横軸は症例数を示す。

左室形成術のみの手術は昨年161例に行われ、死亡率は2.48%であった。

このうちバイパス術を同時に行った症例は129例(80%)で、その死亡率は2.33%で、行わなかった症例32例(20%)の死亡率3.13%とほぼ同様であった。

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虚血性僧帽弁閉鎖不全に対する手術成績を示す。横軸は症例数を示す。

虚血性僧帽弁閉鎖不全に対する手術は今回533例に行われ、前回(501例)より増加した。その死亡率は4.50%であり、前回(3.39%)よりやや上昇した。

僧帽弁形成術を行った症例は415例(78%)で、その死亡率は3.37%であった。このうちバイパスを同時に行った症例は331例(80%)で、その死亡率は4.22%で、行わなかった症例84例(20%)の死亡率は0%であった。

僧帽弁置換術を行った症例は118例(22%)で、その死亡率は8.47%であった。このうちバイパスを同時に行った症例は76例(64%)で、その死亡率は9.21%で、行わなかった症例42例(36%)の死亡率は7.13%であった。

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左室瘤・虚血性心筋症と虚血性僧帽弁閉鎖不全を合併した症例に対する手術成績を示す。横軸は症例数を示す。

左室瘤・虚血性心筋症と虚血性僧帽弁閉鎖不全に対する手術は今回125例に行われ、その死亡率は15.20%であり、前回の死亡率5.93%より著明に上昇し、成績は悪化した。

左室形成術と僧帽弁形成術を同時に行った症例は105例(84%)で、その死亡率は10.50%であった。このうちバイパスを同時に行った症例は86例(82%)で、その死亡率は10.47%で、行わなかった症例19例(18%)の死亡率は10.53%であった。

左室形成術と僧帽弁置換術を同時に行った症例は20例(16%)で、その死亡率は40.0%であった。このうちバイパスを同時に行った症例は13例(65%)で、その死亡率は30.8%で、行わなかった症例7例(35%)の死亡率は57.1%であった。

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本年もご協力いただきましてありがとうございました。締切を過ぎてから送付されてきた施設のものはこの一覧に載っていないかもしれません。また、メールで送られてきたものの中にはどうしても開かないものがあり、この一覧に入っていない施設があるかもしれません。ご連絡いただければすぐに載せます。

連絡先:駿河台日大病院心臓血管外科 折目由紀彦
03-3293-1711(代)
yuorime@med.nihon-u.ac.jp


御協力頂いた施設一覧

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